三つ目の生命鎖
2014.10.03

最近、ブログの更新が滞っておりますが、みんな元気に業務に励んでいる証拠ですのでご了承ください!

突然ですが、皆さんは「第三の生命鎖」と呼ばれるものが何かわかりますか?  ※生命活動に極めて重要となる生体高分子のことを生命鎖と呼びます

ちなみに、第一の生命鎖と呼ばれるものは「核酸」です。DNAとかRNAとか言うアレです。

2003年には人類補完計画・・・じゃなかった、「ヒトゲノム計画」が完了して、全塩基配列も明らかになりました。 その数、30億塩基対以上というからオドロキです!

続いて第二の生命鎖と呼ばれるもの、それは「タンパク質」です。 ゲノム研究の次の段階、すなわち遺伝子の機能・役割を解明することを目的とした「ポストゲノム研究」では、DNA産物であるタンパク質が最初の研究ターゲットになりました。 個人的には「ポスト安倍」が誰なのかも気になるところですが!

さてさて、それでは第三の生命鎖と呼ばれるものは何でしょうか? 答えはこれです!

太陽フレアでしょうか・・・いいえ、違います。 これは細胞表面の「糖鎖」をとらえた電子顕微鏡写真です。黒いモジャモジャっとしたのが「糖鎖」です。 そう、第三の生命鎖とは「糖鎖」のことを指しています。

糖鎖とは、グルコースやガラクトースなどの糖が鎖状に連なった生体高分子のことで、タンパク質や脂質にくっついて生体膜(細胞膜)の表面に存在しています。下の図で言うと、緑色のお団子みたいなのが糖鎖です。

ポストゲノム研究が進んでいくと、生命活動にはタンパク質だけでなく、糖鎖や脂質、あるいはそれらで構成される生体膜の働きも重要であることが明らかとなってきます。

特に糖鎖は、細胞の分化やガン化、細菌やウイルスの感染、細胞と細胞の情報伝達など、さまざまな生命活動に関わっていることから、次の研究ターゲット、すなわち「第三の生命鎖」と呼ばれるようになりました(新たなポストゲノム研究の始まりです)。 そんな新卒ルーキー的な糖鎖ですが、実は近年、バイオ医薬品のターゲットとしても注目されはじめているようです。

例1)病気の診断に役立つ 糖鎖の面白いところは、細胞を簡単に見分けるための「指標」にもなる点です。 たとえば、CSLEX(シアリルルイスエックス)抗原と呼ばれる糖鎖は、膵ガンなどの異常な細胞表面で特に増加することが知られています。膵ガンは早期発見が難しいガンと言われていますが、コノCSLEX量を調べられるようになったおかげで、早期発見も可能になったそうです。

例2)薬が長く効く ホルモン製剤の一つであるエリスロポエチン(EPO)は、3本のN結合型糖鎖と1本のO結合型糖鎖を持つタンパク質ですが、人為的に糖鎖の本数を増やして、シアル酸と呼ばれる糖の数を増やしてあげると、肝臓で分解されにくくなる(血中半減期が長くなる)ことが知られています。 つまり、薬を投与する回数が減って、患者の負担を減らすのにも糖鎖が役立っているのですね。

そういえば、アルツハイマー病や筋ジストロフィーなんかにも、糖鎖の異常が関与しているんですって! 近い将来、糖鎖を基盤とした画期的な薬が誕生するかもしれませんね。 第三の生命鎖、今後も目が離せません!

 

by 麻呂吉(まろきち)