学会発表 in Hawaii
2012.09.20

ハワイで行われた国際学会、“the 7th International Symposium on Cell/Tissue Injury and Cytoprotection/Organoprotection: Focus on GI Tract”に参加してきました。 参加60名ほどの小さな集会でしたが、大物と呼ばれる著名な研究者が多数参加していて、その密度がすごいという事を参加してから周りの皆さんから教えてもらいました。そのような集会に参加できたことを光栄に思います。

会場はワイキキビーチから徒歩1分の絶好のロケーション。爽やかな海風が吹き渡り、残暑の日本とは異なり、汗をかくことがない心地よい気候でした。 ・・とは言え、できない英語の発表に冷や汗ダラダラでしたが。。

さて、何を発表して来たかというと、アスピリンによる小腸傷害の動物モデルについてです。アスピリンはNSAIDsと呼ばれる沈痛・解熱・抗炎症に使われる薬剤と同様に、胃を荒らし、胃潰瘍を起こすことが知られていました。近年、内視鏡の発達により小腸の検査が可能になると、胃だけではなく小腸も傷害して消化管出血を引き起こす事が分かってきました。胃の傷害はアスピリンが胃の防御機能を抑制することで、胃酸によって胃壁が傷つけられると説明されてきましたが、酸の関与しない小腸での発症メカニズムはまだ良く分かっていません。これまでアスピリンを投与して小腸に傷害を起こす良い動物モデルが無かったことも、発症メカニズムの研究が進まない原因の一つでした。今回私たちは、生きているマウスの小腸を顕微鏡映像で詳しく見る事で、これまで傷害が起っていないと考えられていた小腸で、実は前段階となる軽度の傷害が起っており、そこには活性酸素が関わっていることを明らかにしたのです。  アスピリンには抗血小板作用があり、心臓や脳での虚血性疾患の治療、予防にますます多く処方されるようになってきていますが、副作用の消化管出血で亡くなる例も増加していると聞きます。我々の映像が多くの研究者を刺激して病態の解明、治療、予防に繋がる事になればいいな、と願っています。

最後にお別れ会の一コマ。サイエンスとエンターテイメントの融合です。 大物たちは懐が深い。

 

By (ToT)/